《タンポポで縄を綯う》

素材を採る

気温が上がってくる4月から5月にかけて、道端で黄色いタンポポの花が咲いているのを見かけたことはありませんか?あまり気にも留めない間に、綿毛に変わり、風に揺られて飛んでいってしまうので、どこに咲いているか意識しないと案外わからないかもしれません。電柱や、歩道の植栽などに目をやると、暖かいお日様のような黄色い花をつけたタンポポが生えてるでしょう。

タンポポの利用方法は実に様々で、この記事に興味をもっていただいた人の中には、タンポポの花を食べたり、草木染に使ったりしたことがある方がいらっしゃるかもしれません。今回は、花の部分ではなく、茎を使って、細い縄を作る方法をご紹介したいと思います。

自然素材の縄と聞いたら、稲縄を思い浮かべるかもしれませんが、約30㎝以上の長さがあり、ある程度繊維質な植物であれば、どんなものでも縄にすることができます。イギリスのファイバーアーティストのAlice Foxさんの著書Wild Textile(2022)では、様々な植物を使った縄が紹介せれており、タンポポの茎がとてもいい材料だと書いてあったので、実際に作ってみました。以下では、タンポポの採集方法や適期および保管方法とタンポポの茎を使った縄の作り方を説明します。

綿毛が飛んだあとのタンポポ

タンポポを見間違えることなんてないでしょ!と思っている方もいるかもしれませんが、タンポポの茎を採集していると、意外と似た植物があることに気が付いたので、間違わないように、特徴を紹介します。

・茎は薄い緑色

・背丈は個体でまちまち

・一株から少なくとも何本か生えてる(時にはいっぱい)

・枝分かれしていない

だいたい確実なのはこんなところでしょうか。あ!綿毛が生えてる!と思って近寄ってみると、別の植物だったりするので、もし迷ったら、確認してみてください。

下の写真のようなブタナと呼べれるタンポポに似た植物があります。これは、茎の緑色がタンポポよりも濃く、枝分かれしており、複数の花をつけます。枝分かれしていると、縄づくりには使いにくいので、採集する前に要チェックです。

ブタナ

採集時期は、4月から5月にかけて、綿毛が飛んだあとになるべく採集できるといいです。タンポポも子孫を残すために花を咲かせて綿毛を飛ばすので、花を使わない今回のような場合は、綿毛が飛んだあとに採集するといいと思います。実際に、普段往復40分ほどの住宅街の散歩コースを二人で歩いて、これだけのタンポポが取れました。

タンポポの頭の部分をそろえて縛り、吊るすか、新聞紙に広げて、直射日光が当たらない場所で2週間ほど乾燥させます。

植物で縄をつくる時だけではなく、自然素材を使う時は、基本的にまず採集してから乾燥させます。乾燥しきらず、水分を含んだ状態のままで、形を作ってしまうと、いずれ自然乾燥したときに、素材自体が縮み、隙間が生まれ、見た目だけでなく、耐久性も悪くなってしまします。

縄づくりの方法は、素材や、縄の太さや用途で異なります。稲わらなどで縄を作るときは、手の平で藁を挟み、手のひらを擦り合わせる方法がよく用いられます。そのほかにも、細い繊維を使うときは、指先で撚りをかけて作る方法や太ももの上で転がすように繊維によりをかけて、ねじり合わせて作る方法もあります。今回は、タンポポの茎がとても細く柔らかいので、指先で撚りをかけて縄を作る方法を紹介します。慣れてしまえば、テレビを見ながらでもできるようになります。

INSTRUCTIONS

① タンポポの頭を取り除き、霧吹きで水をかけて柔らかなるまで置いておく(5分ほど)

② タンポポの茎を2-3本手に取り、真ん中あたりを2㎝ほど空けて両手でつまむ

③ 利き手の親指と人差し指でつまんだ茎を捻じり、撚りをかける。

④ 撚りを強くかけると、茎自体がねじれて筆記体のL字のような形になります。撚りをかけるときは、親指の腹を人差し指に擦るようにします。

⑤ 交差した部分を左手でつまみ、二股に分かれたうちのA束を右手(利き手)の親指と人差し指でつまみ、撚りをかけます。

⑥ B束を中指、薬指、小指で持ち、A束を指先でつまんだまま、B束の上にかぶせるように、手前に持ってきて、交差させる。

⑦ 左手で交差させた部分をつまみながら、B束に撚りをかける。

⑧ 「⑤」で行ったように、今度はB束をつまんだまま、A束に重なるように、手前に持ってきて交差させる。この後は⑤~⑧の繰り返しです。

⑨ しばらくすると、茎が短くなったり、束が細くなってきます。その時は、湿らせていた茎を足す必要があります。撚りをかける束に新しい茎を加えます。

⑩ 撚りをかける際に、ずれないように、左手の人差し指で新しく加えた茎の端をつまみます。

⑪ 「⑤」とおなじように撚りをかけます。

⑫ 新しく加えた茎の端を左手の一指し指で押さえたまま、これまでと同様に、撚りをかけた束を手間に持ってきます。

Tips

・新しく茎を加える時は、AとB束に同時に加えないようにする。片方に加えたら、⑤~⑧を5回ほど繰り返し、加えた材料が抜ける心配がなくなってから、もう片方の束に追加するようにする。

⑩ ここまでわかれば、あとは材料がある限り、ひたすら縄を長くしていくだけです。今回約20本ほどの茎で、1mほどの縄を作ることができました。一本一本の茎ではすぐにちぎれてしまいますが、こうして縄にすると、かなり強度がでます。両手で引っ張っても簡単にはちぎれません。上品な光沢があり、とてもきれいです。

最後に、途中で加えた茎の縄から飛び出している余分な部分をハサミで切り落としていきます。